映画紹介
夜の新宿歌舞伎町に立つ案内人。彼の人生とドラマ。実際に案内人をしている李小牧の原作をベースにした「歌舞伎町案内人」。
公式サイトでは、写真をふんだんに使った作品紹介、キャストの紹介、監督と製作者のメッセージを掲載。クランクインから打ち上げまでの写真日記もあります。
作品データ
- 監督
- 張加貝
- 脚本
- 神波史男
- 南木顕生
- 原作
- 李小牧
- 出演
- チューヤン
- 山本太郎
- 坂井真紀
- 李丹
- 舞の海
- 製作年
- 2003年
- 製作
- ルートピクチャーズ
- キネマモーションピクチャーズ
関連商品
- 原作本「歌舞伎町案内人」(Amazon.co.jp)
- 原作本「歌舞伎町案内人」(bk1)
バブル期開始時期から現在まで
中国人留学生が
中国人観光客のために歌舞伎町ガイドをやり、
ビザ取得のために日本人と結婚し、離婚し、
中国マフィアと日本ヤクザの抗争に巻き込まれ、
警察からは体よく情報屋として可愛がられ、
かつ朴訥な留学生からヤクザになっていった親友を失い、
自分でつくったガイド組織すら壊滅させられながらも
今後も一人で生きてゆく、ってお話。
その主役をチューヤンが演じるので、
何だかなあとおもっていたのだが、
あの顔は意外に中国的な物質感がある。
映画はそれをよく生かしていた。
この作品は何が何でも試写でみようとおもってもいた。
理由は僕の友達の南木顕生君(結婚、おめでとう)が
師匠の神波史男さんと一緒に脚本を手がけている点がひとつ。
もうひとつは読んでいないながらも
同題の原作がタイヘンに評判がよかったと女房がのたまわっていたこと。
案の定、この映画、
アジア人の席捲する新宿を
最もリアルに描いていたのではないか。
ドキュメンタリー調の画面も効いている。
10年以上にもわたる「新宿クロニクル」なので、
そんな新宿映画をふだん、みつけてきたオレも
どこかでウルッときた。
新宿とアジア人の取合せが荒唐無稽で、
だからこそこれまでの映画はよくなったり、悪くなったりしていた。
よくなった例は、三池崇史の『新宿黒社会』と『日本黒社会』と
渡辺武『チャカ』。
悪くなった例は、李志毅『不夜城』と崔洋一『犬、走る』。
この映画はエピソードが羅列的で中心がないのが難。
とくに日本人美容師・坂井真紀とチューヤンが
結婚したり離婚したりするときの描写が事後報告的で
感情として膨らまないのが痛い。
けど、いいシーンがあった。
木下ほうかがシャブ中でバブル期のディスコに拳銃をもって
アジア人よ、新宿から去れ、と乱入したシーンのあと。
結局ほうかのもっていた銃は単なるモデルガンで
若干の混乱のあと一件落着したんだけど、
取り押さえた山本太郎(中国人留学生役でチューヤンと同期の親友)が
翌朝チューヤンと夜明けの神社にいるシーンが抜群だった。
山本がほうかからとりあげたモデルガンを手にして、
あるゆるもの(自分のこめかみもふくむ)に向け、
発射しない引き金を引き「パーン、パーン」と口で銃声を模すシーンに
いわく言いがたい不吉さがあった。
その山本がバイト先の飲み屋でゲロを吐きかけられて酔客に切れ、
上司も殴って失踪、
次にチューヤンとであった大衆浴場では眼が座って顔つきが変わり、
浴槽から出ると背中に墨を入れていたというシーンも印象に残る
(その前の、中国人は海パン着用で銭湯に入るという伏線が
そのシーンで逆転されるのもお見事)。
山本太郎は、自ら小指を噛み切ってケジメをつけるシーンも
死ぬシーンもよかった。
つまり山本太郎はいつもオーバーアクトで体育会系でナルで
現場をエラソーに掻き乱すって印象があるんだけど、
この作品は例外的、圧倒的に山本太郎がよかった作品として
記憶されるということ。
こんな太郎、初めてだった。
必見!